事業のスタート時にこそ労務環境を整備しましょう

法人を設立した段階で社会保険、従業員をはじめて雇用した段階で労働保険へそれぞれ加入する義務があります。
事業を立ち上げたばかりの時期は製品やサービスの構築、資金繰りなどにリソースが割かれがちだと思いますが、企業を構成する大きな要素は人です。

立ち上げ期の忙しい時期に労務関連まで手が回らないとお考えの方も多いかと思いますが、スタートの段階で体系的に整備しておくことによって後々の問題の予防になり、安心して事業に力を入れることができると考えます。

また、これから事業を軌道に乗せていくにあたって、労働基準法に関する基礎的な知識を持っておくことは事業主として必要不可欠と言えます。

人事総務部門に専任の人員を確保するのは大変です。是非社会保険労務士にアウトソースして安心安全なスタートを切ってください。

事業を開始

会社を設立する場合には報酬が発生するということなので代表取締役一人だけの会社であっても社会保険(厚生年金、健康保険)への加入が必要です。この2つは不可分なので、健康保険だけ加入する、もしくは厚生年金だけ加入する、というのはできません。


必要な手続き:新規適用届、被保険者資格取得届(年金事務所)
       扶養家族がいる場合には被扶養者(異動届)
       配偶者を扶養にする場合には国民年金第3号被保険者の届出

人を雇う

人を一人でも雇うと労働保険(労災保険、雇用保険)への加入が必要です。労災保険は必ず加入する必要があります。
雇用保険はその労働者が週20時間以上、かつ31日以上継続して働く見込みがある場合は加入義務があります。
一方、事業主は労災保険へは特別加入制度がありますが、雇用保険に加入することはできません。
また、従業員の社会保険への加入手続きも必要です。
法定労働時間を超えて労働する予定があるなら36協定の締結、届出もします。
労働者名簿、賃金台帳、出勤簿など法律で定められた帳簿を事業場に備え付ける必要もあります。

必要な手続き:保険関係成立届、概算保険料申告書(労働基準監督署)
       雇用保険適用事業所設置届、雇用保険被保険者資格取得届(ハローワーク)
       雇用契約締結、雇用条件通知書の交付、労使協定の締結、届出
       法定帳簿の備え付け

人が増える

事業が軌道にのり従業員が増えるにつれて色々な規定が必要になってきます。
法律では常時10人以上の労働者を雇用する場合には就業規則の作成、届出が必要ということになっていますが、10人未満の場合でも就業規則がトラブルを未然に防ぎ、従業員の安心にもつながりますので、早めに整備しておくことをお勧めします。
また、労働基準監督署に就業規則を届け出る際には従業員の代表者の意見書を添付する必要があります。
この代表者についても選任方法が適正である必要がありますので注意してください。(事業主が指名したりしてはいけません)
作成した就業規則は従業員に周知しましょう。

必要な手続き:就業規則の作成、賃金規定など各種規定の整備、届出(労働基準監督署)

(安全)衛生管理

従業員が50人以上になると(安全)衛生委員会を設置しなければなりません。
産業医を選任し、労働基準監督署に届け出ます。また、衛生管理者を選任し、衛生委員会を設置、月1回以上開催します。
また、健康診断は従業員の人数に関係なく実施しなければなりませんが、50人以上の場合は診断結果を労働基準監督署へ報告する義務が生じます。
ストレスチェックの実施、報告義務もあります。